知られざる北朝鮮カジノの世界【礒﨑敦仁のコリア・ウオッチング】

北朝鮮のカジノはバカラが主流



コロナ前の2019年には年間20万人の中国人観光客が北朝鮮を訪れた。そのほとんどが中朝国境地域の日帰り、ないし1泊、2泊程度の短期団体旅行であるが、一部にはカジノでのプレイを目的とした中国人も含まれる。 







羅先市のエンペラーホテルには、私も訪れたことがある。それは市内の外れにあった。カジノはホテルの1階にあり、規模は大きくないながらもマカオや韓国のそれにも劣らない豪華な店構えだった。 


北朝鮮側が用意したガイドも案内できるのは店の前まで。そこから先は自由行動である。店内にはサイコロの目を当てるマカオの大人気ゲーム「大小」のテーブルが1台設置されている以外は、全てがバカラ台だった。初心者に好まれるルーレットや、米国で主流のブラックジャック、クラップスなどは皆無である。






賭け金は米ドルのみ。04年以降、米朝関係の悪化に伴って北朝鮮国内の外貨商店でユーロによる支払いが主流になったのとは対照的だ。ミニマムベット(最低限の賭け金)が10ドル、20ドルのテーブルはそれぞれ1つだけ。あとは100ドル台ばかり。つまり、100ドル札がものの数分で飛んでいく世界が繰り広げられていた。







周りを見ていると私以外は全て中国人。それもほぼ全員が漢族で、言葉は東北弁だ。長春や瀋陽といった北朝鮮に近い大都市から来ているのだろう。話しかけてみようかとも思ったが、とても隣の客に気軽に声をかけられる雰囲気ではない。みな殺気立ってカードに集中しているのだ。